そのプロジェクト、炎上しすぎてスカイツリー建てられちゃうよ
宮野くん あたし その一言だけで 一晩で法隆寺建てられちゃうよ
は一時期大流行したTwitter構文ですが、実際にスカイツリー7本分の資金を投じた巨大なITプロジェクトが存在したのをご存知でしょうか?
みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 (日経コンピュータ)
では、4000億円という巨額の費用をつぎ込んだみずほ銀行のITシステム統合プロジェクトの道のりが記録されています。
4000億円というのは、具体的にいくらかというスカイツリー7本生やせるくらいのお金になります。(ところで最近、東京ドーム単位系と同程度にスカイツリー単位系が一般に浸透しているように感じます。)もともと黒魔術中心でミッションクリティカルで複雑な銀行システムの統合プロジェクトが、大人の事情によって延期・中止が重なり、最終的なシステム統合まで19年も要したとのこと。
しかも、その過程で大規模なシステム障害を2回経験した近代日本IT史に光り輝く大炎上プロジェクト
という点で、構成に語り継がれるべき教訓を含んでいると言えそうです。
わずかとはいえ、システム開発に関わっている身ではあるので、その観点からこの本を呼んだときの感想をざっくりと書いておきたいと思います。
まず、本書は大きく3部構成になっていて、
- 第一部:人々の血と涙の代償として誕生した新システムの紹介(と称賛)
- 第二部:どうして2回目の大規模障害がおきたのか
- 第三部:どうして1回目の大規模障害がおきたのか
という順番になっています。エンジニアとしては、第二部が一番読み応えがあるのではないかと思います。
第一部 MINORI
はイイぞ!
今回新たに作り直したMINORI
なるシステムの紹介です。ぶっちゃけ銀行基幹システム業界の用語にちょっと触れられるくらいで、そこまで感動はなかったです。
- n次オンライン
- メインフレームって生きてたんや!
- COBOLって生きてたんや!
- COBOL自動生成するのは何語や?
- SOA?
- micro service ってSOAの発展形ってマジ?
- 現行のシステムが「今後10年、20年は当たり前に使える」って、、
お前は大規模障害から何を学んだんや? - 超高速開発ツールってなにそれ俺も欲しい
- 結局はIT導入と業務フローの整理はセット(90年代から言われてるんかいw)
みたいな気持ちになりました。(詳細は読んでください)
第二部(怪談パート)
開発勢的には一番グッとくるぶぶんかなと思いました。「弊社はイケイケなのでそんな問題起こりっこないです笑」みたいな奴はここから先読まなくて良いので、今すぐブラウザ閉じろQiitaにも似たような「IT怪談」系の記事が定期的に投稿されていますが、あれの巨大プロジェクトバージョンを読んでいるような気持ちになりました。クソ暑い夏に読むには最適ですね、ハイ。
読んでいて、自分もやらかしそうandやらかしたことある感じの部分をまとておきます。
- 裏設定としての上限
- ドキュメントや仕様の引き継ぎ
- 運用時
- 開発用
- フォールバック運転用
- トランザクションfailした時に前と後が変わらない
- ログ!
- 報告、、、
- 心理的安全性とか、様式とか、、、、「現場の頑張りとか」
- 異常時のシナリオは正常時に時間をかけて考えるべき
その他感想等
- 500~800 lines/month←想定より少なかった、言語によるのかな、、某すごい人は、一日に3000行は書く というのに
- 「システムは正常に動作して当たり前」は間違い ←これはマジ
- 「行き過ぎたみずほ批判が新たなリスクに」←最近も聞いたような気がする話ですね
第三部
まぁ、結局上の人がよくわかってない状態だと現場が大変なんだなぁ(他人事)ということですね。これも障害に関する話なんですが、時代が離れているせいもあるのか、第二部ほどは怖くなかったです。 お気持ちとしては
- 日経コンピュータってひょっとして当時のみずほめっちゃ嫌い?(融資してもらえなかったとか?)
- 「できれば雑音が入らないように、チームのメンバーを外部と連絡が取れない場所に隔離してやらせるとさらによい。」←みずほ銀行バチカン支店
といったところなんですが、それより、最後の締めがちょっと気持ちわるいというか、「Air/まごころを、君に」の終わりみたく感じました、、
全体を通して
旧みずほシステムの何がやばくて、どうしてやばくなったのか、という点が詳しく書かれていると感じました。現代IT業界における「失敗の本質」のような内容といえるかもしれません。
しかしその反面、どうしたらやばくならないかという点については議論されていないと感じました。
自分が知っている範囲では、これらに対する解答として
- アジャイル開発
- TDD
などがあると思っています。また、書籍としては、「エンジニアリング組織論への招待」とかになるのかなと思いました。
もう一つ、気になる点としては、日経コンピュータによる取材がベースになっているということです。第三部が一番わかりやすいのですが、旧みずほに対する負の感情が滲み出ていてそれなりにバイアスがかかった内容なのかなと思います。
その点で、Amazonの書評は結構的を射ているのではないかと思いました。
以上!
ps
青は多大な犠牲を払ってシステム統合したわけだけど、クラウド移行するって言ってた赤は、現状どんな感じなんだろ?
但し書き
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